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第234回 いのちの根

 本棚の上段から一冊の本を取出す。フロアーに尻をつけたままページを捲る。三浦綾子著の小説『塩狩峠』です。久し振りの感動を味わいました。いまから102年前の明治42年2月28日夜の出来事です。北海道の旭川と稚内を結ぶ鉄道宗谷本線を走っていた列車の最後尾の車輌が逆行しはじめました。車輌に設置されているブレーキのハンドルを回したが凍りついて利かず、徐行はしたものの停まりません。乗客が多数います、このままではズルズルと斜面を下って加速すると大事故となります。この物語のクライマックスです。どうするか・・・・?名寄駅から乗車した「長野政雄君」が線路に飛び降りるや、線路と車輌の間に我が身を挟ませ、暴走を停めました。弱冠29才の我が身を捧げたのです。ベストセラーになり映画化されました。これは 「究極の愛」ではないでしょうか。仏教でも「捨身飼虎」の話しの如く飢えた虎に己を捨て施すこれを「菩薩」といいます。武豊にも同様な話しがあります。金下にあるJR東海武豊駅前の顕彰像です。昭和28年(1953年)9月25日の台風13号の襲来により、塩田付近の線路が高潮で運行不可能となりました。武豊駅で勤務していた、高橋熙君は東成岩駅を発車した列車に危険を知らすため発煙筒をたいて暴風雨の中へ飛び出し列車を停止させましたが、高潮にのまれて殉職されたのです。ここにも「菩薩 」がいました。昭和29年9月にはその勇気を称え胸像が建立されました。東日本大震災の大津波でも、自らの命も顧みず多くの人達を助けるために、半鐘をタタキつづけた消防団員、安全な場所へと誘導した警察官、そして同業である建設作業員、皆、ほんとうの「愛のお福け」ではないでしょうか。3月11日から、はやくも4ヶ月が過ぎました。まずは、尊い殉職者達の慰霊をすべきで、それから復旧、復興、へと進むべきではないでしょうか。西も東も真っ暗闇ではあります。いいわけせず、批判に耐え、じっと屈辱に辛抱するこの業界ですが必ずや眼の色が輝き、いのちの根が深くなると思います。共にこの暑く苦しい日々を乗り越えましょう。
 今日は夏休みに子供らに一度聞かせるため筆をとりました。

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