IWABEメッセージ
第265回 可能にする言霊
この年になっても夢の中で通知表のことが出てきます。たぶん成績の悪さが思い出にあるからでしょう。通信簿の結果が不十分であっても、バカだ、ダメな子だなどと一度も叱られたことはなかった気がします。小学校の頃、点数の低い答案を返却されるたびに、暗い気持ちになったものです。隠し通すことが出来ず、おそるおそる見せると、母親は決まった答えを返してきました。今も鮮明に覚えています。「おまえのほんとうの実力はこんなものではない。おまえには眠っている力がある。それを出せば成績なんてじきによくなるし、将来はきっと偉い人になれる」と言ってくれました。誉め殺しそのものです。兄弟が8人もいるのだからうまいことを考えたものです。同じことを何回も言われているうちに、心の中に不思議と自信のようなものが湧いてきます。きっと解けると思い、投げださずにやる。さあ、どうでしょう。粘り勝ちかどうかは知れませんが、何かの拍子に御名算と共に実力があると信じ込むようになり、成績アップ。「出来る、必ず出来る」とくり返し言われると、それがプラスの自己暗示をもたらすのです。「ダメだ、ダメだ。失敗する」と言われ続けられると、本当に失敗し、自信を喪失し、自己嫌悪という悪循環に陥ってしまいます。現場廻りをするときは、「キラーフレーズ」といって口にしてはいけない言葉です。
伊勢神宮の「式年遷宮」はなぜ20年か。奈良の春日大社には「式年造替」という制度があり、20年ごとに御殿の修繕をいたします。なぜ、御殿のご修繕は20年ごとなのか。それは「人を育てるための知恵」であり「不可能を可能」にすることなのです。人間の寿命に合わせているからであり、ご修繕には特殊な技術が必要です。どんな大工さんでも無理です。20年ごとであれば、初めて経験する20代、2回目で中心的な役割を果す40代。3回目となると経験を活かし指導者としてのアドバイス。3世代が揃い確実に次の世代に技術や技法が伝承できます。「人を育てる」制度で不可能を可能にする日本人の素晴らしい人造りの知恵です。
まずは「ほめる」。これこそが子供達の教育そのものです。ご参考に。