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第273回 耐震技術の歴史

 世界最大の木造建築である奈良東大寺の大仏殿は745年に建てられた寺です。源平の争乱時代に一度、戦国時代にも一度、合計二度も焼失しています。いずれも火事のためで、風とか地震のためではありません。現在の大仏殿は、1692年に再興され、今日までその姿を保っています。大仏は盧舎那仏で仁王像は運慶、快慶の合作です。約300年間もの長期にわたり、あれだけの大建築が無事だったのは、どういう理由によるものでしょう。それは、地震や台風という、人間の物差では計ることのできない自然の力を予想して建築されたからです。
 日本の家屋を大きく変革したのは「瓦」です。瓦は非常に丈夫で、耐久性があると同時に重量があります。この重い瓦を支えるために柱が太くなければなりません。東大寺の名物でメインの柱に大きな穴があけてあります。子供が潜ると好運を導くともいわれています。瓦が重いなりに柱が太くなると、地面にいっそう重力がかかります。その結果、掘っ立て柱では沈下するのです。地中に沈むのを防ぐために礎石を置かなければなりません。礎石は、地面の湿気を遮断することにもなり耐湿効果をさらに強めます。岡崎康生町の建物は現在の免震工法による施工です。積層板により柱一本当たりの直荷重は1700tonを受けています。大きな技術の進歩により安全な地震対策をなしています。瓦の発想は「うろこ」であり、元来、魚の鱗のことを「かわら」 と言います。中国では屋根にクギで固定していますが、日本はこれを泥で固定しました。泥では滑りやすいですが実は、この滑るところに知恵を働かし、地震や台風に対応したのです。地震があって、家が一方に傾くと、傾いたほうの瓦が滑り落ちます。その限界は25度ともいわれています。一方が落ちると当然、反対側が重くなり、その力で反対側に復元します。さらに傾いて、そちらの瓦も落ちるわけです。その動作により瓦が落ちると屋根は裸になって軽量になり、建物の木組だけが残り、押しつぶされることがないのです。こうして長い間、無事であるのは、まさに先輩達棟梁の知恵なのです。現在ではその血を受け継いで安全な建築物の建設に力を入れているのです。これこそ岩部建設の伝統でもあります。ご安全に。

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