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第289回 血騒ぐ若人の季節

 春の選抜高等学校野球大会も大きなドラマを生み、奈良の智弁学園がその栄を掴みました。
 「高松商業」との決戦は球史に残る大試合でした。いつも思い出すのはイチロー選手のチームメイトを思い遣る心です。最後の夏の愛知県大会で、愛工大名電高校は惜しくも決勝戦で敗れてしまい、甲子園行きを逃してしいました。試合終了後選手たちはグランドに泣き崩れ、互いに抱き合いながら号泣していました。
 一方、イチローは涙も見せることなく、クールに佇んでいました。チームメイトの輪に加わることなく別方向に歩き始めたのです。それは応援席でした。そしてその中の一人に歩み寄り、「ごめんな」と声をかけました。その生徒は野球部の同級生のうちで、ただ一人ベンチ入りができなかった選手でした。甲子園を目標に頑張ってチームを支えてきてくれた仲間への感謝を、決して忘れていなかったのです。野球とはなんとすばらしいスポーツでしょう。
 デスクを離れるとき、いつも復唱する言葉があります。それは「ありがとう」という五文字です。3月末日をもって完成引渡しをした「パークナード名駅新築工事」の施主、松下幸之助創業のパナホーム株式会社様です。その思いは使命感から生まれた「街」づくりで、基本方針は「良家」といい、「社是」となっています。そして、日々、「ありがとう」あるのみといいます。パナソニックを一代で築き上げた名実業家の経営哲学だそうです。こんな話を聞いたことがあります。新幹線の中に乗られていた松下社長をみて、大ファンだという夫が妻からミカンを渡してもらい、きっかけを作ることにしました。松下氏に差し出すとうれしそうに「ありがとうございます」とお礼を言ってくれたといいます。下車されたあとも夫婦の座席のある窓のところまで来て発射するまで見送ったとか。夫婦は大感激し、すっかりナショナルびいきになったのは言うまでもありません。何かしら営業の原点ではないでしょうか。「ありがとう」と言うのは何気なくても、言われるほうはうれしいものだと素直に思います。社業発展のご文字ではないでしょうか。
 ご安全に。

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