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第233回 仏が住む浄土

 岩手県と宮城県の県境に平泉町があります。平泉といえば中尊寺と答えるでしょう。世界遺産への推薦にあたって、文化庁と地元自治体が掲げた主題が「浄土」です。浄土とは仏が住む場所のことで仏国土ともいます。金色堂に納められる奥州藤原氏4人のミイラも有名です。1950年の学術調査で木棺を開くと確かに3人の遺体と1人の首級がありました。「ご遺体の内臓は皮膚がくっついて一体化していたが、背中はきれいであった」。遺体はなぜ800年余も腐らず残ったのか。木棺の下に穴があり、風通しをよくする工夫がされていました。木棺に使われた青森ヒバの効能という説もあるといいます。そもそも藤原氏はなぜ遺体を保存したのでしょうか。みちのくの主が極楽浄土に無事に往生したということを目に見える形で、当時の民衆に示そうしとしたのではないでしょうか。奥州藤原氏は歴史の大きな渦に巻き込まれ消えていきました。滅びの美学を感じ美的な文化への造詣を感じています。歌舞伎十八番の勧進帳は頼朝に追われる義経を弁慶が白紙の口上をもって、その難を逃れ、冨樫の前でたたきのめして安宅の関を渡る。その一節は涙を誘います。我が子のように守った優しい人は3代秀衡であり、知多郡野間大坊に眠る「池の禅尼」と共にあります。西方の山に日の沈む夕景をみたとき、知多も平泉もここは確かに「浄土」であると感じます。秀衡たちが築きあげた地が約1千年の時を経て、世界遺産に選ばれることは、この知多の民も本当に素晴らしいことであると喜ばなければならないのです。浄土は「現実の世界を清める」という意味もあります。この世をよいものに変える営みをさします。それは、「人の心に平和のとりでを築かなければならない」というユネスコ憲章に通ずると信じています。金色堂を建てた初代清衡は、都から収奪され続けたみちのくの歴史の終止符を打ち、都から一目置かれる文化的な洗練を見せつけたのではないでしょうか。平等の教えを重視した法華経の思想で対等の関係を考えたのではないでしょうか。この知多半島も楽しい所であると思いつつ、日々、大震災の東北を思い一筆啓上します。いよいよ59期も終日です。この一年間本当にありがとう御座いました。

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