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第266回 八丁味噌の力

 「一富士、二鷹、三茄子」といって縁起のよいベスト3に挙げられます。これは家康伝説に関係があって、ある江戸城から駿府に隠居を決める際にお城を建設する大切な条件として挙げたのです。食の養生にもつながり、体力づくりを心がけたことにもよります。富士はどこからとなく現れます。その山の威容に幾度も声をあげるほどで、現在は世界遺産に登録されています。終生の趣味としていたのは鷹狩です。野山を駆けめぐり、足腰の筋力の鍛練と気分転換。そして農民たちの苦労や生活ぶりの民情視察を兼ねます。まさに一挙両得です。健康志向で茄子。初物を食べると75日寿命が延びるという俚諺(民間のことわざ)がありますが、この「折戸なす」は岡崎の八丁味噌の効用と共に豆味噌をつけて焼いて楽しんだと思われます。4月17日は4(よ)1(い)7(な)すびということで「茄子の日」といわれます。その日はなんと元和2(1616)年享年75歳で他界した命日でもあるのです。久能山東照宮博物館には徳川家光の筆になる「茄子図」が収蔵されているそうです。ころりと丸い絵です。「食」 を大切にし質素倹約を旨とし、粗食を率先し、生きのこるため、麦飯と豆味噌を常食とし、旬菜を良しとしました。三河に生まれた「竹千代」少年、のちの家康は駿府に居城を定めていた今川義元のところへ送られ、8歳から19歳まで人質として過ごしました。そこで「生」を学び、命は食にありの心をつかむのです。終生好んだ生まれた地である岡崎独特の豆味噌を、江戸に移ったときわざわざ届けさせたのです。それが名物八丁味噌です。岡崎城から西へ八丁(およそ870メートル)の距離にある八丁村(現岡崎市八帖町)は東海道と矢作川の舟運が交わる水陸交通の要所でした。この地で江戸時代から作られているのが八丁味噌です。大豆だけを原料として豆麹をつくり、二夏二冬の2年間寝かせた正真正銘の天然醸造です。その昔、出陣に際し、携行食とし、生姜、ねぎ、大葉を刻んで混ぜて約3センチにまるめ、厚1センチとしました。焼き味噌と芋がら(ズイキ)の味噌煮と縄を熟成して水抜きした製品はエネルギーのかたまりであるそうです。
 今月は少々家康の勉強といきましょう。

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