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第271回 そば屋と寿司屋の作法

 今池にある老舗「千種豊月」。美浜町では「さいとう」。「谷屋」は城西にあり。全て蕎麦の名店です。上社では「めん処浅ひろ」のとろろそばは格別にうまい。岡崎の現場東にある「にしんそば」はこれまた美味です。皆様も一度のれんを潜って下さい。昼食時には必ず名店に駆け込む。こんなことはないでしょうか。ざるそばを頼んでも、縺れた毛糸のようになった蕎麦を摘んで困っているのを見たことがある。振ってほぐそうとし、無理とわかると、ざるに戻し、箸でほぐして切り分け始める。ほんとうにそばが哀れになります。職人はざるの上にそばを広げ、その上に少しずつ載せていきます。食べやすいように考えてのことです。だから、その逆にてっぺんから下のほうへ少しずつ、つまんでいけばいいそうです。4筋か5筋がちょうどいい。そのくらいつまんでは汁をつけて食べます。ざるや盛りなどの冷たいそばは、そばの先に汁を少しだけつけて、威勢よく啜り込むのが作法とされます。「そのほうが、そばの味と香りが楽しめる」とは豊月の名物おばあさんの教えです。そして「そば」は、勢いよく啜りこみ、噛むと飲むの間でほどよく口の中で転がし、喉ごしを楽しむものなのです。これを手繰るといいます。断じて、そばは音も立てずにしずしず食べるものではありません、とそのおばあさんが申してました。
 落語の世界では生半可の知識を振りかざす人を「薬缶」と言うそうですが、これは本物です。寿司屋の符牒を使わないことがこれまた、通だそうです。ガリ、シャリ、ギョク、ムラサキ、アガリと言わず、しょうが、ご飯、玉子焼き、醤油、お茶といえばよく、「オアイソ」というのもいただけない。あれは本来、店が客に勘定書を渡すときに、「愛想もなくすみません」の意味だそうです。客は「勘定を頼みます」でいいそうです。マナー違反はつまみだけで、いつまでも酒をぐだぐだと飲み長話は最低だそうです。又、大トロとかエンガワだけは非常識です。「赤身、白身、こってり、巻き物」の流れで10貫一人前が基本だそうです。今月は知ったかぶりですみません。

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