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第272回 神聖なるは山

 歴史的な御嶽山大噴火(3067m)です。11月15日現在で死者56名、行方不明者は7名となります。山頂はマイナス5℃、雪です。1890人の捜査隊も追酷を極めています。噴石と灰が伴い、有毒ガスの発生で地獄の有様となり早期発見は難しい。亡くなった方々や行方不明者には心より謹んで哀悼の意を表します。山小屋に食糧などの荷物を上げる「ボッカ」のバイトをやっている男がため息をつきながらぼやいています。「最近の登山者にはひどいのが多すぎる。山歩きの掟を知らないバカは山に入ってはいけない。山に神が生きているからである」。まずは両手にストックがいちばん腹が立つそうです。昔はストックを突いて山に入る人間なんていませんでした。それが中高年の登山者が増えてから使うようになりました。ストックは山道を壊します。山道に穴があくのです。両手に持つダブルストックで突いては突いては畑を耕すようなもので、雨が降れば土が流され崩れます。山道は荒れる一方です。これでは山ノ神が怒り鉄ついを落とします。杖で「六根清浄」と唱える山参りの行者。寒参りする者が菩薩の位を六根互用とする清らかな言葉であり体を補助するストックとは違い心の杖なのです。日本アルプスを抱える長野県は、年間70万人もの登山者が訪れ、遭難事故は多く、2012年は過去最多の254件の山岳遭難が起こり、死者は40代以上で8割近くを占めます。登りは何とか体力が持っても、山を下るまでの体力はありません。このため、下山途中にバランスを崩して滑落死するようなケースが多いそうです。富士山の世界遺産登録で、山への関心が深まるなか、経験の少ない登山者の遭難も目立ちます。安易な「連れられ登山」も増えて、あの行列での姿を見ると唖然とします。地図やコンパスを持たない人が多いらしいです。その理由はスマホの地図アプリがあるからだそうです。山は怒るし嵐もある。電波も不規則です。そうそう大切な高山植物の盗掘も後を絶たないそうです。山での掟は守る、それこそ己の命のためです。御嶽山の頂上は今も白い噴煙が立ちのぼっています。雪こそ白い神です。聖なる山です。自然を愛し、山と共に生きることこそ大切ではないでしょうか。

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