IWABEメッセージ
第276回 和風建築のすばらしさ
香川県高松市に「二蝶」という有名な料亭があります。文化財にも登録されている由緒ある建築物で、今年はその広間で食事をさせていただきました。床の間は書院造りで船底天井や下がり天井。そして欄間は見事な杉材です。杉は湿気が多いと膨らみ、少ないと縮みます。通気や湿気の調節にはもってこいです。天井の造りは、たしか羽重で、板と板の端を重なり合うように組んで、空気が出入りできるようになっています。しかも、東西南北の方位、風の流れ、湿気を考え自然と風が流れ、いつも自然の換気扇が回っていると思います。煙草の煙は、スーッと外に流れますし、自然とのバランスはすばらしい。これこそ数寄屋は日本建築の知恵の宝庫です。土台は檜、小屋組材は松、天井、鴨居、床板は畳から杉板の3種類の木材です。食事は一流、芸者は年増で三味線の名手。この室での2時間は満足します。一般住宅と料亭の違いは過ごす時間が問題です。昔から料亭3時間、旅館は1日、家一生と言われ、造りの凝りすぎは、尻が落ちつかないといわれています。年月を経た材木は丈夫で長持ちでその木目には一種独特の風格があります。天井材は杢です。笹の葉や鶉の羽、あるいは玉のような模様が切り面に現れ、その美しさの風合いを木味といいます。すばらしい木材を拝見しました。まさしく文化財です。待合建築のスペースの取方、特殊技能を生かした引き戸は、三枚重ね四枚重ねの空間を取り、上がり框と沓石の柱受けには、満足するものです。
この景色に目をたのしませ、日本人であることの喜びを味わいます。芸者や仲居の立ち振舞い。少々の金が問題ではなく、いい勉強をするのです。そうそう我々の建設するマンションのプランに日本伝統の和式を加えることによって、ドアーによる空間的ロスを出さずに引戸による人間的落ち着きを出せます。畳という住いの良さと共に人間を取り戻すことが出来ないかと思います。そして格納所として押入れ。狭い空間の「現代の住」を考えたいものです。由緒ある建物を拝見して調和について考えさせられました。しっかり利益を上げて来年も岩部八幡神社と二蝶に参上したいものです。