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第278回 花と古里

 青森の南西部の中心都市はリンゴやコメの名産地で弘前といいます。ねぶた祭りと共に津軽氏10万石の城下町はいよいよ桜祭りの季節です。いつも櫻便りを聞くと「造園家、佐野籐右衛門」の著書を思い出します。「さくら大観」は全国の桜を調査し、その深い愛と自然観に基づいた書であり言動もすばらしいです。特に序文は見逃すことは出来ません。「花見でカラオケはなぁ。花によくないねん。カラオケは金属音の微振動やさけ、それで花びらがこすれるわけ。そして花びら回りが茶色になってしもうて、色のあせた花になる。かなしいなぁ。」
 一般的には、花は太陽に向かって、上を向いて咲きます。桜の花は全部した向きで俯いて咲き、人が下に入ると花全体が覆いかぶさって包まれるような柔らかい感じがしてすばらしく、人の心を観ているようです。庭に咲いている垂桜は西尾にある植木市で手に入れてから10年になりますが具合が悪く花付がさびしい。しかし、どういう訳か今年は美しく咲きました。幹は少々皺がありますが、何とも言えない風格があり、この雨にも負けず、綺麗に咲き見事です。まだまだですが来年の春には色香を醸し出すことを期待しています。
 半田市の名所では矢勝川の彼岸花の群生があります。一名、曼珠沙華といいます。これは最後の食料となってしまった人肉をすら食べつくした後にその球根のデンプンで命を守り、彼岸へ渡らず生きられるとして「彼岸花」といわれます。本来は渡来植物で、雄株は日本の酸性土に適応せず、雌株だけが残りました。タンポポのように遠方に飛び植えることはありません。10年間で1メートルぐらいが領分で、殖やすことはできません。その彼岸花は墓地や川の土手に勝手に生えているのではなく、祖先の人々が飢饉のときを考えて植え、「毒だから触ってはいけない」と云い伝えました。
 「赤い花なら、曼珠沙華、オランダ屋敷に雨が降る」と歌われ、その花は細長く哀愁を感じさせます。美しさだけでなく「さくら」は戦争を思い出し日本武士の心酔を歌います。満開からさっと散る。そして、なにかしら曼珠沙華も悲しい歌です。これでいいんだ、花とは命をいいます。
 今月はなにかノスタルジックですみません。

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