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第282回 お陰さま

 東京駅から神奈川の茅ヶ崎まで湘南電車で約1時間10分です。城山三郎先生と車中で話し合ったことを思い出します。きみの住んでいる武豊という町は静かな空気が流れているのかと聞かれました。何の事かと一瞬返事が出来ませんでした。音を出す街か、音を出す店があるか、という質問です。いい店なら、黙っていても客は入ります。音を出すのは、商品やサービスに自信のない証拠です。それに何より、騒音をまき散らしても、自分の店さえ儲かればいいという感覚が許せません。街頭放送するような店もそうですが、音楽やラジオを戸外へ流し続けるのも公害です。多くの人は静かさを好み、音楽好きの人でも好き嫌いがあります。むやみに音楽を流すのは、目に見えぬヘドロを押し付けるようなものです。ヘドロがたまり続ければ、人は寄りつかなくなります。他人に迷惑をかけて、商売が成り立つはずがありません。そうです、そのような店がないわけではないですが、いや、静かですよ、と答えた。昔から「奇道は王道にかなわぬ」といいます。音を出すなどというのは、奇道というより、むしろ邪道に近い。少しでも心のこもったサービス、よりより品物をと心がける。その正道を骨太く辛抱強く貫き通すこと、長続きする本物の客をとらえるには、それしかありません。人間であろうと、企業であろうと、他人に迷惑をかけて長続きしたためしはないと教えられました。今の頭から離れません。それと、「お陰さま」でという言葉です。何とすばらしい言葉でしょうか。それは相手に対してだけでなく、多くの人たちに対して、いや、自分がここに存在するために力を貸してくれた、天地自然に感謝する言葉です。
 まもなく、茅ヶ崎の駅に着きそうです。そして夢から目が覚めます。この頃、よく夢の中に現れます。しばし、「お元気ですか」と聞きたくなります。「お陰さまで、とても元気です」と答えが返ってきます。社会に生きているすべての人に向けて感謝の気持ちなのです。先生の声が耳元に聞こえてきます。ご安全に。

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